わかりやすく、まず、力率とは何か、なぜ力率が必要かを説明します。
つぎに、電気工事士の試験対策として、よく出る過去問類題を計算します。
最後に実例として、扇風機のコンデンサーを使った力率改善を紹介します。
第二種電気工事士筆記試験を独学で対策している方にもわかりやすいように、話を強烈に「かんたん」化して説明しています。
「力率」とは何か
まず、「力率」とは何か、から説明します。
電気は、明かりを点けたり、物を温めたり、電動機(モーター)で力を得たりするために利用されます。
電動機は、扇風機や洗濯機に使われています。
この電動機は、コイルに電気を流し、電磁石にすることで磁石を回し、回転力を得ます。
つまり、電動機はコイルのかたまりなのです。
これを詳しく見るために、電源と電動機を回路図に描いてみると、
という形になります。
電動機は、部品としてコイルを使っていますが、この部品は、電気回路で言う所の抵抗とコイルの特性を併せ持ちます。
「部品」という括りで見ると、どんな部品も、多かれ少なかれ、抵抗、コイルなどの性質を併せ持っています。
たとえば、電池でさえも内部に抵抗の要素を持っているのです。
教科書などでは、説明のために、単純化して「コイル」、「抵抗」などと書いてあります。
ここでは、より実践的で役に立つ、モーターの1部品としてコイルを取り上げてみました。
というわけで、電動機の部品としての「コイル」と電気回路で言う所の特性としての「コイル」の2つの言葉が出てきましたが、すぐ別の言葉に変えます。ご安心を。
ここで、このページでは、説明がわかりやすくなるように、電気回路の特性の呼び方を変えます。
まず、特性としての「抵抗」を「変換器」と呼ぶことにします。
電気を、力や熱に変換するからです。
つぎに、特性としての「コイル」は大胆ですが、「ぶらぶら器」と呼ぶことにします。
力仕事をしないで、ぶらぶらしているからです。
実は大事な役割があるのですが...。
さて、電源から電流を流すと、(力)変換器とぶらぶら器に電流が流れますが、電動機の力になるのは、変換器の部分だけです。
ぶらぶら器に流れた電流は、力仕事をしてくれません。
正確に言うと、仕事をしているのですが、プラス仕事をした後すぐに同じだけマイナス仕事をしてしまうので、足して 0 仕事になってしまうのです。
ならば、変換器だけでぶらぶら器は要らないではないか、と思うでしょ?
でもコイルという部品から、この2つを切り離すことはできません。
コイルという部品1個を使うと、中に2つ特性が入ってきてしまいます。
傷だらけだけど美味しいリンゴ、みたいに、2つの特性は切り離せません。
さてさて、電気がする仕事を電力といいます。
変換器(抵抗)がした仕事を「有効電力」、ぶらぶら器(特性としてのコイル)がした仕事を「無効電力」、回路全体としての電力を「皮相電力」と呼びます。
3つの電力の関係は、以下の図のように直角三角形になります。
お待たせしました。いよいよ力率の登場です。
力率とは、この3つの電力の中の2つ、皮相電力と有効電力の比になります。
上の図で、斜辺と底辺の比は、cos(コサイン)と呼ばれるので、力率もコサインで表現されますが、難しいと思う人は、単なる記号と思ってもらっても構いません。
つまり力率とは、どれだけ電力をかけて、実際どれだけ有効な電力となったかの比、ということです。
なぜ「力率」の考え方が必要か
では、なぜ「力率」の考え方が必要になるのでしょうか。
交流回路に入れた電圧Vと電流Iを単純に掛け算した電力を皮相電力と呼びます。
みかけの電力という意味です。
この皮相電力のうち、実際に力や熱になった電力を有効電力と呼びます。
力率とは、これら電力の比(有効電力 / 皮相電力)で、効率を意味します。
つまり、力率を使って機器の性能のうちの1つを評価することができるのです。
そして、扇風機などの電機製品は、この比(力率)が良いことが必要です。
でないと、他社製品より効率が悪く、涼しくない扇風機というレッテルを貼られてしまいます。
力率の計算方法と、よく出る過去問類題を計算
では、電気工事士の試験対策です。
単相交流の電力は、有効電力P、皮相電力の電圧V、皮相電力の電流Iとすると、
という式になります。
(皮相電力S = 皮相電力の電圧V × 皮相電力の電流I ですね。)
では、第二種電気工事士の試験に出るような問題を1つ取りあげます。
1つのパターンは、電流を答える問題です。
また、試験で聞かれる消費電力とは、抵抗で消費される有効電力のことです。
問題
単相200[V] の回路に、消費電力1.6[kW]、力率80[%]の負荷を接続した場合、回路に流れる電流[A]は。
解き方
力率(COS θ)は、斜辺(V×I)と底辺(P)の比だから、
両辺に同じものをかけても同じだから、次のものを両辺にかけて、
聞かれている電流 I=の式を作る。
上の式の両辺に、I/cosθ をかけましょう。
となります。
では、上の問題の数値で、計算をしてみてください。
答えはここをクリック。
なお皮相電力は、この電流と電圧を単純に掛け合わせた、2,000W(=10A x 200V)です。
できましたでしょうか。
頭痛薬が欲しくなった人もいますでしょうか。
進相用コンデンサによる力率の改善と試験対策
ぶらぶら器(特性としてのコイル)により、力率悪化していますが、改善する方法があります。
負荷(電動機)に並列に、進相用コンデンサを入れます。
すると、コイルの影響による遅れ電流を、コンデンサによる進み電流により、改善することができます。
コンデンサによる進み電流Icにより、負荷に流れる電流Ixは、改善された(長さが短くなった=電流が小さくなった)Iになります。
第二種電気工事士の試験問題
さて、第二種電気工事士の試験では、力率の改善に関するどんな問題が出題されるのでしょうか。
前節の「力率の計算問題」は、よく出題されますが、実は、「力率改善」に関しては計算問題は今の所、ほとんど出ていません。
出題される問題は、「コンデンサを入れたことにより、電流計の指示値はどう変わるか」、くらいです。
答えは、「コンデンサを入れる前と比べ(電流計の指示値が)減少する」です。
簡単ですね。
この問題が出題されたら、いただきです。
しかもこの問題、結構出題されます。
私の時も出題されました。
しっかり、頂きました。
実例 コンデンサーによる扇風機の力率改善
習ったことを脳みそに焼き付けるために、実例を紹介します。
例えば扇風機には、コンデンサーが入っています。
次の写真は、扇風機の裏のフタを外したところです。
銀色の円筒形の部品がコンデンサーです。
これが身近にある、コンデンサーによる力率改善の例です。
本来は、フタを外してはいけませんが、撮影用に専門家がフタを開けて撮影しています。
一般の方は、フタを開けないこと。
感電します。
まとめ
電気の力率とは何か、なぜ力率が必要かを説明し、電気工事士の試験対策として、力率関係の計算方法などを紹介しました。
力率は、聞き慣れない言葉なので、最初は、むずかしく感じると思います。
第二種電気工事士試験では、この辺が難しさのピークです。
交流だから問題になる、力率やインピーダンスなどまでをマスターすれば試験対策は完璧です。
力率やインピーダンスができなくてもガッカリしないでください。
これらはかなり高度で、これらができなくとも、他の問題で6割得点できれば、第二種電気工事士の学科試験に受かります。
それと、もちろん扇風機にも、いろいろな種類があるので、すべての扇風機に必ずコンデンサーが入っているわけではありません。
ではこれで、力率の説明を終わります。
「インピーダンスとは何かをわかりやすく、実験をまじえて。抵抗やリアクタンスとの違いは?」もあります。
では、頑張ってくださいね~。
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材料は、切ってしまったりするので試験対策にしか使えません。
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