わかりやすく「三相3線式とは、その必要性、利点・メリット」、「単相3線式と三相3線式の違いを、わかりやすく」、「三相3線式はなぜ400Vにならないのか?」などを解説します。
第二種電気工事士筆記試験を独学で対策している方にもわかりやすいように、話を強烈に「かんたん」化して説明します。
まず、イメージを頭の中に作り、その後で詳細を覚えていくのが筆記試験のコツです。
三相3線式6,600Vは電柱の柱上変圧器で三相3線式200Vに変換され、これは動力200Vとも呼ばれます。
三相3線式が正式な書き方で、3相、三線、は正式な書き方ではありません。
最初が漢字、次が数字です。
単相って書くくらいなので、三相も最初が漢字です。
もちろん、三層も間違いです。
ちなみに、第二種電気工事士も、第2種電気工事士や電気工事士2種は正式な書き方ではありません。
三相3線式をわかりやすくー なぜ三相3線式が必要なのか、三相3線式とは
さて、三相とは、少しずつ時間的にずれた3つの電気の波という意味です。それを3本の線(3線)で送ります。
一方、単相とは1つの波です。
三相3線式は、電動機(三相誘導電動機)つまりモーターを回すのに非常に都合がいいのです。
なので、動力とも呼ばれます。
なぜ、電動機には三相3線式が良いか、必要性を説明します。
電動機は電気を力に換える装置です。
電動機の中では磁石がコイルに引き寄せられたり(図中の① )、反発されたり(図中の②)して回転力を得ています。
でも、コイルが一組だと、周りにコイルが無い所では磁石は、強い力を受けることができません(図中の③)。
そこで、コイルの数を増やして連続して強い力を得られるようにしてあります。
下の図では、色分けしてある、対角で1組、全部で3組のコイルがあります。
でもこれ、ちょうど良いタイミングでコイルに電気を流すのが難しいと思いませんか。
電動機は高速で回転します。
何も使わずに、簡単に、この電気を流すタイミングが取れる方法があるのです。
実は、発電所にある発電機の構造も、上の図の電動機と基本同じです。
発電機は、水力や蒸気の力でタービン(プロペラが束になったもの)を回し、回転力から電気を作ります。
電動機は逆に、電気から回転力を作ります。
やはり、コイル3組で構成されています。
発電機の中で、コイルの前を時間がずれて磁石が通過するので、ずれた3つの波(三相)の電気が起きます。
三相とは、強くなったり弱くなったりする電気の波がずれたタイミングで3つあるという意味です。
図で描くと次の図のようになります。
ここでは、電力会社から送電された三相3線式6,600Vを描いています。
これゆえ、発電機の3線をそのまま電動機につなげば電動機は勢い良く回ります。
なぜって、回っていたものから取った電気なので、この3線をつなげば、うまいことコイルに電気を流すタイミングが取れて、難しい装置を間に介さずに、電動機が回るというわけです。
これが1つ目の三相3線式のメリットです。
もう1つの三相3線式のメリットは、単相が3つ集まったものとも考えられるので、3つ集めた力が出せるのです。
つまり、単相は1人力で、三相は3人力で仕事をするということです。
電力は、各相の電力の和で求めます。
これらが三相3線式の主な利点、メリットです。
しかも、「きほんのき – 感電でおぼえる線間と対地、単相をわかりやすく」で説明したように、三相3線式6,600Vから容易に住宅で使う単相100V/200Vが作れます。
ですので、電力会社は三相で送電しています。
三相3線式配電は以下の図のようになります。
三相3線式と単相3線式の違いを、わかりやすく
同じ3線式でも、三相3線式と単相3線式の大きな違いは、
三相3線式は、電気使うときに3線同時に配線しないと使えません。
単相3線式は、3線のうち2線だけを選んで使います。
この選び方で100Vが取れたり、200Vが取れたりします。
選ぶのは、引き込んだ後の「屋内分電盤」の中です。
単相は下の図のように、波形が1つです。
なので、電流の行きと帰りの2線で十分なのです。
図を見ながら、確認しておきましょう。
三相3線式配電方式
高圧6,600Vの3線のうち3線全部を変圧器に入れ3波形作る。
そして、電柱の柱上変圧器から工場などに配電し、必ず3線全部を電動機に配線する。
線間電圧はすべて200V。
単相3線式配電方式
高圧6,600Vの3線のうち2線だけを変圧器に入れ1波形作る。
そして、3線で100Vと200Vを電柱の柱上変圧器から住宅などに配電する。
住宅内の配電盤の中で、3線のうち2線を選んで、100Vや200Vを住宅内の機器に配線する。
もちろん、全ての電柱に変圧器があるわけではなく、1つの変圧器から電柱数本に電線を引きまわしています。
お家の周りの電柱を、よく観察してみてください。
なぜ電力会社は高圧で送電するのか?
でも、電力会社はなぜ高圧の6,600Vで送電(電柱などで電気を送ること)しているのか、最初から200Vで送電すればいいじゃないか、という疑問が出てきませんか。
これには主に2つの理由があります。
1つ目は、工場などでは200Vより高い電圧が必要な場合があります。
例えば、大量の鉄を溶かす場合など。高い電圧が必要になりそうですよね。
家のエアコンと同じではとても間に合いそうにありませんよね?
そこで、そういった工場などでは6,600Vのまま引き込み、自分の敷地内に変圧器を置いて、自分達に適した電圧に変換します。
自前で変圧器を置くので、「自家用電気工作物」と呼ばれます。
私も最初「工場なのに、なんで自家用?」と思いました。
6,600Vで受電するので、第二種電気工事士では工事ができず、第一種電気工事士の工事範囲になります。
第二種電気工事士が工事できるのは何Vまでの受電? 2秒でお答えください、試験に出ます。
もう1つの理由は、送電ロスの問題です。
電気エネルギーは電力で考えます。
皆さんの身の回りの器具もよく「何ワット」という電力で表示されていますよね。
例えば、冷凍食品の温めを、電子レンジの700ワットなら2分、500ワットなら2分30秒、などと書いてありますよね。
電力は、電圧×電流ですが、同じ1,000Wの電力でも
100A×10V=1,000W
10A×100V=1,000W
は大違いなのです。
発熱Hは
H=I2RT、(I:電流、R:抵抗、T:通電した時間) ← 試験に出るかも
となり、電流の2乗になるので、同じ電力を送る場合でも送電ロス(発熱量)を極力小さくするには、電流を下げ、その分電圧を上げて送電する方がお得となるのです。
ここまでで、三相3線式の一般的な説明は終わりです。
次は、ちょっと踏み込んだ話です。
私が受験勉強中に抱いた疑問です。
三相3線式は、なぜ400Vにならないのか?
私は勉強を始めたときに、三相3線式の線間は400Vになるのではないか、テキストは誤植でないかと思いました。
結局、受験するまでにこの理由が浮かばず、「400Vでなく200Vになるものだ」と、頭ごなしに覚えました。
後になって、私なりの解釈ができたので紹介します。
もしかすると私と同じように理解に苦しんでいる人がいるかもしれないので。
単相の時には、対地100Vが2つあり、線間は200Vになっていましたよね。
同じように考えると、三相3線式の配電方式に対地200Vが2つあるなら、線間は足して400Vになるだろう、と私は思いました。
でも400Vにならないです。200Vなんです。どうしてでしょう。
まず、下の図で三相3線式の配電を再び、見てみましょう。
三相の配電方式では、電柱の6,600V高圧線の3本全部を使います。
そして、わかりやすく言うと、変圧器は2つ使います。
三相3線式の変圧器では、この2つが1つにパックされています。
3線式なので、変圧後の電気が3本の線で出てきます。
このうち1本は変圧器が故障した際に200V側に6,600Vが流れ込まないように安全対策として接地されています。
①-②間は200V と②-③間も200V はいいとして、 ①-③間は200V+200Vで、400Vになるのではないか。テキストは誤植ではないか、と思いました。
でも同じページにある表の中でも①-③間は200Vと書いてあったので、間違いではないようでした。
みなさんは不思議に思いませんか?
以下は、私なりの解釈で間違っているかもしれないのでご注意を。
間違っていたらコメント欄から指摘してください。
ここで、変圧器のしくみを復習します。
変圧器は、電気を磁気に変え、再び磁気を電気に変えることで、電圧を変える装置です。
電圧は、入力側の巻数と出力側の巻数の比で決まります。
例えば、6,600Vを200Vにしたければ、
6,600巻と200巻にすればよいわけです。
この原理を使って、次の図で巻き数の比による出力電圧を考えると、
A 6,600巻きとB 200巻きとなるので、①-②間は200Vになる。
C 6,600巻きとD 200巻きとなるので、②-③間も200Vになる。
①-③間は、 13,200巻き(A 6,600巻き+ C 6,600巻き)と400巻き(B 200巻き+ D 200巻き)となる。
比は2で割っても同じ比となるので、 13,200:400=6,600:200となるから、やはり①-③間も6600Vを200Vに変換することになり、400Vにはならないというわけです。
まとめ
以上で、単相3線式と三相3線式の違いの説明は終わりです。
単相と三相の違いがもっと知りたい方と、単相がよくわからない方は、単相3線式を説明した「きほんのき – 感電でおぼえる線間と対地、単相をわかりやすく」も読まれることをおすすめします。
線間と対地、接地側と非接地側もわかりますよ。
記事「三相と単相の見分け方」もあります。
また、「インピーダンスとは何かをわかりやすく」では、実験をまじえて、インピーダンスと抵抗の違いなどをわかりやすく解説しています。
力率も、「力率とは、力率の必要性をわかりやすく」で説明しています。
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