わかりやすく「インピーダンスとは何か」、「抵抗やリアクタンスとの違い」を実験をまじえて、解説します。
実験と言っても、計算による数値実験です。
手に負えないという方は、過去問類題つけましたので、この図が出たら、こう計算すると対策してもよいかもしれません。
第二種電気工事士筆記試験では、この辺が難しさのピークです。
第二種電気工事士筆記試験を独学で対策している方にもわかりやすいように、話を強烈に「かんたん」化して説明します。
まず、イメージを頭の中に作り、その後で詳細を理解していくのが学科試験勉強のコツです。
本記事は、第二種電気工事士筆記試験の対策記事ですが、他の方にも、インピーダンスの本質を理解するために役立つかもしれません。
インピーダンスとは
インピーダンスやリアクタンスは、いろいろな箪笥でも、ロボットdance でもありません。
一言でいうと、要するに「インピーダンスとは、周波数によって変わる電流の流れ難さ」のことです。
これが分かるまで私は数年、かかりました。
英語のimpedeには、「妨げる、じゃまする」という意味があります。
また、インピーダンスは電気ばかりではなく、機械系や音響系でも使われます。
ここでは、電気系、しかも電気工事士の試験対策向けについて説明します。
抵抗やリアクタンスとの違いは?
電流の流れ難さという言葉では、抵抗という言葉がありますよね。
では、抵抗と何が違うのか。
実は、抵抗もインピーダンスのうちの1つです。
抵抗以外のインピーダンス要素には、リアクタンスがあります。
つまり、
合成インピーダンス = 抵抗 + リアクタンス
となります。
リアクタンスの性質を持つ物に、コイルとコンデンサの2つがあります。
つまり、インピーダンスと、抵抗やリアクタンスは、違うのではなく、抵抗とリアクタンス両方とも、電流を流れにくくする「要因」で、合わせたものを合成インピーダンスと呼ぶ、ということです。
詳しく、書き直しますね。
合成インピーダンス = 抵抗 + コイルのリアクタンス + コンデンサのリアクタンス
となります。
コイルと言えば、代表的な使い道は、電動機(モーター)です。
電動機は、中に入っている磁石とコイルで、電気を力に換えています。
コンデンサは、電工の試験では、「力率改善」というお話で登場します。
一方、抵抗は負荷のことになります。
電球やクッキングヒーターが負荷に当たりますね。
なぜ、インピーダンスをむずかしく感じるのか
抵抗は、おそらく既に知っている方も多いと思います。
でも、インピーダンスやリアクタンスは、初耳の方もいると思います。
なぜか。
それは、今まで習ってきたの電気が「直流電圧」で、今から「交流電圧」の勉強をするからです。
直流電圧と言えば電池。
身近で、簡単、しかも1.5V程度と電圧も低く、安全ですので、電気のお勉強をするために小学生から電池と豆電球の実験をします。
電池は、いろいろなおもちゃにも使っているので、小学生にも身近ですよね。
でも、小学生から、インピーダンスやリアクタンスを習いません。
どうしてでしょう?
それは、コイルやコンデンサに直流電圧をかけても、「つまらないから」というのが、このサイト流の答えです。
もちろん、小学生にそんなに詰め込んでも可哀そうだから、という理由もあります。
抵抗、コイル、コンデンサの違いを実験(数値実験)結果で解説
では、なぜ「つまらないか」を説明するために、直流電圧や交流電圧を、抵抗やコイル、コンデンサにつないだ時にどうなるかを、実験(数値実験)の結果でお見せします。
数値実験とは、実際の部品ではなく、部品の特性を使い計算を行って、結果を調べる実験のことです。
ここでは、交流電圧は、交流の中では一番簡単な、単相交流電圧について話をします。
抵抗に直流電圧や交流電圧をかける
まずは、抵抗です。
次の図のように、抵抗に直流電圧や交流電圧をかけます。
直流電圧をかけた場合の電圧と電流の波形は次の図のようになります。
抵抗は、100Ωの場合です。
グラフの見方は、横軸が時間[s]、左縦軸は電圧[V]、右縦軸が電流[A]です。
以下すべてのグラフで、同じように座標軸をとっています。
V=IR
なので、Iは1Aとなります。オームの法則ですね。
100Vの電圧をかけると、1Aの電流が流れる、というわけです。
次に、2つ前の図にあるように、抵抗に交流電圧をかけた結果です。
電圧は左の縦軸、電流は右の縦軸でしたね。
電圧の上がり下がりと同時に、電流も上がり下がりするので、波形が重なっています。
コイルに直流電圧や交流電圧をかける
次は、コイルです。
下の図のように、コイルに直流電圧や交流電圧をかけます。
ここで、直流の場合、コイルだけだと電流が無限大になってしまうので、計算の都合上、抵抗を入れます。
このことは、オームの法則 V=IR で、Vが一定で、Rが極小さくなってゆくと、Iがどんどん大きくなることからも、わかりますね。
大丈夫でしょうか?
なぜ、コイルの電流が無限大になるかは、この記事の後半に出てくる、コイルのリアクタンスの式の周波数fに0(=直流)を入れて考えてみてください。
そして比べやすいので、同様に交流の場合にも抵抗を入れておきます。
抵抗は、100Ωとしました。
さて、直流電圧をかけた場合の電圧と電流の波形は次の図のようになります。
今、コイルに抵抗成分が無いと仮定しているので、コイルの前後で電圧降下が無いことから、上の図で、AB間のコイルの両端電圧を測っても0Vです。
実際の「部品」では、多少コイルも抵抗値を持ちます。
難しいかもしれませんね。
ちょっと、解説しておきます。
電流が流れていて、途中抵抗に合うと、その前後で圧力差が生じます。
何の抵抗も無ければ、圧力差は生じません。
この圧力差が電圧(電位の差)です。
抵抗が無ければ、その部品の前後での両端電圧は0Vです。
この辺が、電気の独特の考え方ですね。
新しい知識(アイテム)をゲットしたと、考えてください。
オームの法則でも、抵抗Rが0だと、Iがいくつでも、Vは0になりますよね。
さてさてBC間では、抵抗により電圧が降下するので、BC間は電圧100Vとなります。
これらゆえ、コイル前後の両端電圧と抵抗前後の電圧は以下の図のようになります。
電流は、先ほどの抵抗の説明で計算した1Aですね。
次に、2つ前の図にあるように、コイルに交流電圧をかけた結果です。
電圧の上がり下がりと同時に、電流も上がり下がりします。
しかも、よく見てください。電圧に遅れて(時間が経った、右にずれる)、電流が上がり下がりしているでしょ。
これが、「位相が遅れる」というやつです。
抵抗に交流を流した時の図と比べてみてください。
電圧と電流の波形が一致しているか、否かが違うでしょう?
丁寧に言うと、「電圧の波形に対し、電流の波形は、位相が遅れている」となります。
コンデンサに直流電圧や交流電圧をかける
最後に、コンデンサです。
下の図のように、コンデンサに直流電圧や交流電圧をかけます。
ここで、コンデンサには抵抗を入れていません。
なぜでしょう?
実は、コンデンサは直流電圧をかけても、電流を流しません。
残念。
下の図を見てください。
AB間の電圧を測ると、100Vありますが、コンデンサを流れる電流は、0Aです。
電流が流れなくても、電圧はかかるのです。
?という人は、「電工 きほんのき – 電流と電圧」を読んでください。
では次に、2つ前の図にあるように、コンデンサに交流電圧をかけた結果です。
電圧の上がり下がりと同時に、電流も上がり下がりします。
でも、よく見てください。電圧より早く(左にずれる)、電流が上がり下がりしているでしょ。
これが、「位相が進む」というやつです。
丁寧に言うと、「電圧の波形に対し、電流の波形は、位相が進んでいる」となります。
力率改善に出てきた、「進み電流」というのは、このことです。
どうして、つまらなかったか
「小学生がインピーダンスやリアクタンスを習わないのは、コイルやコンデンサに直流電圧をかけても、「つまらないから」というのが、このサイト流の答えです。」と書きました。
もちろん、これは話を面白くするために、極端に言ったのですが、どうして「つまらないか」は、理解しましたでしょうか?
つまり、
コイルに、直流電圧をかけても両端電圧を生じない
コンデンサに、直流電圧をかけても電流が流れない
ので、部品を付けている意味が無いのです。
なので、「つまらない」のです。
どうして、「インピーダンスとは、周波数によって変わる電流の流れ難くさ」と言えるのか
一言でいうと、「インピーダンスとは、周波数によって変わる電流の流れ難くさ」のことです、と言いました。
なぜでしょうか?
実は、直流電圧は、交流電圧の仲間です。
交流電圧とは、電圧の値が、時間と共に変化するもので、周期的に1秒間に50回、電圧が変わると、「周波数50Hz」と言います。
この周波数がどんどん低くなって、しまいに0Hzになると、1秒間に1回も電圧が変わらない、つまり、直流電圧ということです。
この時、電圧が0Vである必要はありません。100Vの一定でも構いません。
なので、上の実験で見てきたように、直流電圧や交流電圧という風に周波数を変えて電圧をかけると、電流の流れ難さが変わる部品に、コイルやコンデンサがあり、この性質をインピーダンスと呼ぶ、ということができるのです。
インピーダンスの計算方法
インピーダンスは、以下の公式で計算できます。
覚え方は、
・ コイルは、周波数が大きく(高く)なるほど、リアクタンスが大きくなる
・ コンデンサは、周波数が大きく(高く)なるほど、リアクタンスが小さくなる(=分母に来る)
と覚えてください。
では、第二種電気工事士の試験に出そうな計算方法の1例を示します。
図のような交流回路において、抵抗4[Ω]の両端電圧[V]を求める。
電圧は、抵抗とコイルで100Vから0Vに落ちるのですが、電圧降下の配分がわからないので、電流を頼りに求めていきます。
電流は、V=IRより、I=V/Rと計算できますが、このRがコイルやコンデンサが入った回路の場合、合成インピーダンスZで考えます。
合成インピーダンスZが分かれば、I=V/Zで電流が求まります。
抵抗2個なら、4Ωと3Ωを足して、7Ωと計算できますが、コイルやコンデンサが相手の場合そうはいきません。
合成インピーダンスで計算です。
合成インピーダンスは、上の式のZ、これは、三角形の斜辺を計算していることになります。
この回路には、コンデンサが無いので、合成インピーダンスダンスにXcは無し(=0)ですね。
さて、合成インピーダンスが出たので、電流は、I=V/Zより
I = 100 / 5
= 20 [A]
となります。
ようやく、抵抗の両端だけの電圧Vの計算ができます。
V = I R
= 20 × 4
= 80 [V]
となります。
お疲れ様。
過去問類題
では、過去問類題をやってみましょう。
問題
図のような交流回路において、抵抗8[Ω]の両端電圧[V]は。
イ.14
ロ.48
ハ.72
ニ.80
(過去問類題複数回出題)
正解は、この行をクリック
答え
ニ.
上の計算方法と同じ手順です。
察しの良い人は、3・4・5の比の直角になる三角形で、類題の方は、解説の回路の2倍になっているとわかったと思います。
でも、抵抗の両端電圧は80[V]で変わりません。
元々の100[V]を抵抗とコイルで、どう配分するかで、3:4が変わらないからですね。
正解できましたでしょうか。
まとめ
「インピーダンスとは何か」、「抵抗やリアクタンスとの違い」を実験の結果をまじえて、解説しました。
私も、インピーダンスがなかなか、わからなかった1人です。
電工の試験を受けるずっと前、エレキギターのエフェクターを自作していた時に、インピーダンスという言葉が出てきて、「なんだろう?」と数年思っていました。
インピーダンスと言えば、「ロー出し、ハイ受け」、「インピーダンス・マッチング」など重要なことが他にもあるのですが、電工の試験に出ませんので、今はここまで。
X(ツイッター @iro2info )にブログの更新情報などを上げています。
また、電光ナイフを使わない、VVRケーブルの外装を剥く新しい方法も紹介しています。
よろしければ。
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今時、こういうのもあります。
材料は、切ってしまったりするので試験対策にしか使えません。
なので、返すというサービスもあります。
材料の処分も楽で、価格も半分位でしょうか。
器具と電線だけ返却、数量限定だそうです。
レンタルではない3回セット。工具、テキストなし。
アマゾンでのレンタルではない3回セット。工具、テキストなし。
2回セット。工具、テキストなし。
1回セット。工具、テキストなし。
この他の実技用道具や材料は、「独学一発合格!実技試験対策」に書きました。
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